学生のためのエシカルコスメ入門:お小遣いで環境にも肌にも優しい選択を
はじめに:いつものコスメ選びに「エシカル」な視点を
日々の生活に欠かせないコスメやパーソナルケア製品。新しいリップや好きな香りのシャンプーを選ぶ時間は楽しいものです。しかし、その製品が作られ、私たちの手元に届き、そして使い終わった後、どのような社会や環境への影響を与えているのか、深く考えたことはありますでしょうか。
エシカル消費は、商品の背景にある倫理的な側面や環境への負荷などを考慮して購入を決定する消費行動です。食品や衣服だけでなく、実はコスメやパーソナルケア製品にも、エシカルな選択をするための様々な視点が存在します。
本記事では、学生の皆さんでもお小遣いの範囲内で無理なく始められる、エシカルなコスメ・パーソナルケア製品の選び方と、その背景にある社会・環境問題について解説します。普段の買い物の際に、少し立ち止まって考えるきっかけとなれば幸いです。
エシカルコスメ・パーソナルケアとは何か?
「エシカルコスメ」や「エシカルなパーソナルケア製品」と聞いて、漠然と「自然派」や「オーガニック」をイメージする方も多いかもしれません。しかし、エシカルの概念はこれらより広範で、製品の製造・流通過程における倫理的な配慮全般を指します。
具体的には、以下のような視点が含まれます。
- 動物への配慮(クルエルティフリー): 製品開発や製造において動物実験を行わない、あるいは動物由来の成分を使用しない(ヴィーガンコスメ)など。
- 環境負荷の低減:
- 成分: 生分解性の高い成分を使用する、マイクロプラスチックを含まない、持続可能な方法で採取された原料を使用するなど。
- パッケージ: プラスチックの使用量を減らす、リサイクル可能な素材や再生素材を使用する、詰め替え容器を用意するなど。
- 製造過程: エネルギー効率の良い製造方法を採用する、排水処理を適切に行うなど。
- 人権・労働環境への配慮(フェアトレードなど): 原料の生産に関わる人々の適正な労働条件や賃金を保証する。児童労働や強制労働を排除する。
- 情報透明性: 製品の全成分、原料のトレーサビリティ、製造過程における企業の倫理的な取り組みなどを開示する。
これらの要素全てを満たす製品は少ないかもしれませんが、一つの製品の中に複数のエシカルな側面を見出すことができます。
なぜコスメ選びに「エシカル」が求められるのか
私たちが何気なく使用している製品の裏側には、看過できない社会や環境の問題が隠されている場合があります。
例えば、動物実験は、動物に苦痛を与える倫理的な問題が長年指摘されています。また、多くの洗顔料や歯磨き粉に含まれていたマイクロプラスチックビーズは、下水処理施設をすり抜け、海洋汚染の原因となり、海洋生物や生態系への影響が懸念されています(現在では多くの国で規制されていますが、意図せずマイクロプラスチックを生成する成分や、他の形態のマイクロプラスチックへの懸念は残ります)。
さらに、コスメに使用される植物性原料の中には、生産地での森林破壊や生物多様性の喪失、あるいは生産者の低賃金や劣悪な労働環境といった問題と結びついているものも存在します。過剰なプラスチックパッケージは、大量の廃棄物を生み出し、環境に長期間残り続けます。
個人の消費行動は小さな一歩に見えるかもしれませんが、多くの人が意識的に選択することで、市場のトレンドを動かし、企業に倫理的・環境的に配慮した製品開発を促す力となります。
学生のお小遣いでできるエシカルなコスメ選び
エシカルなコスメは高価であるというイメージがあるかもしれません。確かに、厳選された希少な原料を使用した製品は価格が高くなる傾向がありますが、工夫次第で学生のお小遣いでもエシカルな選択をすることは十分に可能です。
以下に、具体的なアプローチをいくつかご紹介します。
1. 情報を集め、表示を読み解く
製品を選ぶ前に、まずは情報を収集することが重要です。
- 認証マーク: 「クルエルティフリー」(動物実験を行わないことを示すウサギのマークなど)、「フェアトレード」、「オーガニック認証(例:COSMOS、Ecocert)」など、信頼できる第三者機関の認証マークは、その製品が特定のエシカル基準を満たしていることの一つの証となります。これらのマークの意味を知ることから始めましょう。
- 成分表示: 全成分表示を確認し、マイクロプラスチック(例: Polyethylene, Polypropyleneなど)や、環境負荷が懸念される成分(例: 一部の紫外線吸収剤など)が含まれていないか意識する。全ての成分を覚える必要はありませんが、関心のある成分について調べてみるのは良い学びになります。
- 企業のウェブサイトや方針: 購入を検討しているブランドが、動物実験についてどのようなスタンスをとっているか、環境保護やサプライチェーンの倫理についてどのような取り組みを行っているかを調べてみましょう。透明性の高い企業は、自社の取り組みを積極的に開示しています。
2. 製品選びの視点を変える
- 「クルエルティフリー」を意識する: 動物実験を行っていないことを明記しているブランドや製品を選びましょう。プチプラブランドの中にも、この方針を掲げているところは増えています。
- 環境に配慮したパッケージを選ぶ: 詰め替え用が用意されている製品を選んだり、ガラスや金属、FSC認証紙などのリサイクルしやすい素材を使用したパッケージの製品を選んだりすることを意識しましょう。最近では、プラスチック使用量を大幅に削減したパッケージや、再生プラスチックを使用した製品も増えています。
- 「シンプル」な製品を選ぶ: 成分数が少ない、パッケージが簡素であるなど、全体的にシンプルに作られた製品は、環境負荷が比較的低い傾向があります。固形石鹸やシャンプーバーなどは、プラスチックパッケージをなくすことができる代表的な例です。
- 必要なものを必要なだけ買う: 衝動買いを避け、本当に必要なものだけを丁寧に選んで購入することも、無駄な生産や廃棄を減らすことに繋がります。
3. ライフスタイルの中で実践する
- 詰め替えを習慣にする: 洗剤やシャンプーなど、詰め替え用が販売されているものは積極的に利用しましょう。本体容器のプラスチックごみを大幅に削減できます。
- ものを大切に使う: 購入した製品を最後まで使い切ることも重要です。試供品なども無駄にせず活用しましょう。
- 自分で作ってみる(選択肢の一つとして): ハードルが高いと感じるかもしれませんが、リップクリームや化粧水など、シンプルなものから手作りを試みることで、含まれる成分や容器についてより深く考えるきっかけになります。
あなたの選択が社会を変える一歩に
エシカルなコスメ・パーソナルケア製品を選ぶことは、単に環境や動物に優しいというだけでなく、それを製造・販売する企業の姿勢を応援し、業界全体に持続可能な方向へと変化を促す行動です。
学生である皆さんの購買力は、企業にとって無視できない存在です。「お小遣いだからできることは限られている」と思う必要はありません。一つ一つの意識的な選択が、より良い社会を築くための確かな一歩となるのです。
さらに学びを深めるために
この記事を読んで、エシカルなコスメやパーソナルケアについてもっと知りたいと思った方のために、いくつかの情報源へのステップをご紹介します。
- NPO/NGOのウェブサイト: 動物福祉、環境保護、フェアトレードなどを専門とする国内外のNPO/NGOのウェブサイトでは、特定の認証制度の詳細や、企業の取り組みに関する調査報告などが公開されています。
- 専門メディアや書籍: エシカル消費やサステナビリティに特化したオンラインメディアや書籍では、具体的な製品情報や、より深い社会・環境問題の解説を見つけることができます。
- ドキュメンタリーフィルム: 消費社会や特定の産業(例:コスメ産業、化学産業)の裏側に迫るドキュメンタリーは、視覚的に問題を理解する助けとなります。
エシカルなコスメ選びは、探求すればするほど奥深いテーマです。ご自身の関心のある入り口から、ぜひ学びを深めてみてください。
終わりに
エシカル消費は、完璧を目指す必要はありません。できることから、少しずつ、楽しみながら取り組むことが大切です。この記事が、皆さんの日々のコスメ選びに新たな視点をもたらし、お小遣いから始めるエシカルな一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。